便秘症
便秘症とは
便秘症とは、本来体外に排出すべき便を快適に十分量排出できず、日常生活に支障が生じている状態で、そのため残便感や腹部膨満、腹痛などを自覚することになります。便秘症の原因には、大腸癌などの病気により大腸内腔が狭窄して起こる器質性便秘と、大腸内腔の形態異常は見られないものの腸管の蠕動運動が低下したりすることにより起こる機能性便秘があります。頻度としては、機能性便秘によるものが圧倒的に多く、機能性便秘の場合にはストレスを減らし、朝食をきちんと取り適度に食物繊維を摂取するなどの生活習慣の改善を行うことで症状が軽減することもしばしばあります。しかし、生活習慣の改善でも便秘が持続する場合は、内服薬による治療が必要になります。また、向精神病薬や一部の鎮痛剤などの腸管蠕動運動を抑制する薬を内服している場合、可能ならば必要に応じてそれらの内服薬の調節を行うことで症状が軽減することもあります。大腸癌などによる大腸内腔狭窄が原因の器質性便秘の場合は、外科的な手術による治療が必要になることが多く、器質性便秘との鑑別には、しばしば大腸内視鏡による精密検査が必要になります。
参考ブログ:大腸癌
便秘症の症状
便秘症では、排便の回数や排便量が低下することにより、便が大腸内に滞ったり直腸の中の便を快適に排出できない状態になります。排便の回数や量や硬さには個人差があるものの、便秘症では排便回数が減少し、排便間隔が不規則になり、1回の排便にかかる時間が長くなったりすることで、排便困難感を感じたり、腹部の膨満感や腹痛、残便感をしばしば自覚します。残便感や腹部膨満を解消しようと、トイレで腹圧を強くかけてきばって排便したりすることで、時に虚血性大腸炎を発症してしまい、腹痛や血便を認めることもあります。便秘症では、便が大腸内に停留している時間が延長することで、便の水分含有量が減少していることも多く、そのため便が固くなることもしばしばあります。いきんで硬便を排出しようとすると肛門に負担がかかり、痔核や裂肛などの痔疾患を発症し、肛門部の痛みや血便を認めてしまうことも時にあります。また、便が固くない軟便の状態でも、腸管の運動機能の不調などにより、便の排出困難や残便感を強く感じる便排出障害を認めることもあります。
参考ブログ:虚血性大腸炎
便秘症の原因
便秘症の原因には、大腸癌のような何らかの疾患により大腸内腔が物理的に狭窄して便の通過が阻害されて起こる「器質性便秘」と、大腸自体が狭くなったりする形態異常はないものの腸管運動機能の低下などにより排便がスムーズに行われない「機能性便秘」があります。機能性便秘は腸管自体の形には異常が見られない便秘症で、その原因がはっきりわからない特発性のものが最多ですが、食物繊維の摂取不足や運動不足などの生活習慣の乱れなども関与していると考えられています。便秘症は高齢者になるほど、その有症率は高くなっており、年齢に伴う腸管運動機能の低下や、排便時にいきむ時の筋力低下・腹筋の筋力低下などの関与も考えられます。また、甲状腺機能低下症や糖尿病などの疾患により、腸管運動蠕動の低下をきたすことや、向精神薬や一部の鎮痛薬などの薬の影響により、腸管の蠕動運動が低下して機能性便秘を発症することもあります。器質性便秘の原因として最多なのは、大腸癌による腸管狭窄です。それ以外にもクローン病や、高度の虚血性大腸炎や大腸憩室炎などの炎症性変化によって、大腸内腔が狭窄してしまい器質性便秘を発症することも稀にあります。
便秘症の検査と診断
便秘症の診断には、まずは患者さんの症状を丁寧に聞く問診が重要になります。便の性状や、排便回数、腹痛や腹部膨満の有無、排便困難感や残便感の有無、薬などでの治療歴や治療の有効性、現在治療している病気、現在内服している内服薬などを確認することで、便秘の原因を推定できることがあります。便秘症の原因が、大腸癌などによる器質性便秘である場合には、物理的な大腸狭窄が原因であり、下剤などの薬物療法は根本的治療とならず、多くの場合には外科的な治療が必要になるため、便秘症の治療では器質性便秘でないことを確認することが大切になります。レントゲン検査や腹部エコー、腹部CTなどの画像検査で、大腸の拡張や便秘の状態を大まかに評価することもありますが、便秘の状態であっても必ずしも大腸癌などの腫瘍性病変があるとは限りません。大腸の精密検査としては、大腸内視鏡検査が最も情報量が多く、内視鏡検査をしばらくしていない患者さんでは大腸内視鏡での精密検査が必要になることがあります。大腸内視鏡検査では、腸管内の詳細な観察と、腫瘍性病変があれば生検による細胞採取を行い、細胞の病理検査を行なうことで大腸癌の確定診断を行うことができるため、腫瘍性病変があるかどうかの鑑別には内視鏡検査が最も有用な検査となります。
便秘症の治療
機能性便秘の場合には、まずは生活習慣の改善を図ることが必要になります。腸管の蠕動運動は自律神経の働きにより調節されているため、ストレスがかかると便秘の症状が悪化することもあります。ストレスを減らし、きちんと朝食をとり適度に食物繊維を摂取するなど食生活の見直しを行い、水分摂取が不足して便が固くなっている場合には適度に水分摂取を行うことも必要です。また適度な運動を行うことも、腸管の蠕動を刺激するために大切になります。生活習慣の改善での便秘の症状が改善しない場合、薬物療法を併用することになります。便秘薬は大きく分けて、腸管の蠕動を刺激する刺激性下剤と、便の固さを調節する機能が主な働きである緩下性下剤があります。便が固い場合は、まずは緩下性下剤や整腸剤を使用して便の固さを調節します。肛門から入ってすぐの直腸で硬くなった便が栓をして排便困難となることも時にあり、この場合は肛門から指を入れて肛門近くの硬便を砕いて排出する摘便が必要になることもあります。緩下性下剤で症状が改善しない場合、刺激性下剤を併用して腸管運動を促し排便コントロールを行います。器質性便秘の場合、特に大腸癌などの腫瘍による便秘の場合には、外科的手術により腸管の狭窄の解除が必要となります。