超音波検査「大腸⑤」
エコーでは、気体があるとその背側は超音波が届かず見えません。胃や腸などの消化管は内部に気体を含むために、消化管の診断では内視鏡の方がエコーよりもはるかに優れています。ただし大きな病変の場合は、エコーでも病気の存在診断が可能なこともあります。大きい進行癌では大腸壁の限局性壁肥厚がエコーで見えることもありますが、早期大腸癌ではエコーでの診断は多くの場合困難です。①~⑤はS状結腸の進行大腸癌の同一症例画像です。大腸壁は表層から、粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜の計4層で構成されますが、筋層より深い層まで癌が浸潤した進行大腸癌では、癌が大腸壁の層構造を破壊し粘膜層から筋層まで一塊となった壁肥厚を示します。①~③でも進行癌により肥厚した大腸壁が黒く見え(赤色矢印)、内部に狭窄した大腸内腔の腸管ガス(白色矢印)が白く見えています。これは、シュード・キドニー・サインと呼ばれる進行大腸癌に典型的なエコー所見です。シュード=偽り、キドニー=腎臓という意味で、進行大腸癌では中心が白く外が黒い腎臓の様に見えるために、「偽りの腎臓」という意味の名前がついています(「超音波検査(消化管)」を参照)。④,⑤は同一症例の内視鏡画像で、内視鏡の通過は可能でしたが、進行癌により内腔は高度に狭窄しています。
⑥~⑩は横行結腸の進行大腸癌の同一症例の画像です。⑥,⑦では横行結腸の一部に、エコーで約5cm弱の黒色にみえる限局性壁肥厚(赤色矢印)として進行大腸癌が描出されています。病変口側の正常の大腸内には腸管ガス(水色矢印)が白く見えています。気体の裏側には超音波は届かないため、腸管ガスの背後に黒色の影(桃色矢印)が引いて見えます。腸管ガスを含む正常の横行結腸から連続して、大腸癌により層構造が破壊され黒色に肥厚した大腸癌病変部(赤色矢印)が描出されており、大腸癌により狭窄した腸管内腔に存在する大腸ガス(白色矢印)が内部に白く見えています。大腸壁が癌により黒色に肥厚し、内部に偏在した腸管ガスが白く見えるシュード・キドニー・サインを示しています。狭窄した内腔に認める腸管ガス(白色矢印)の背後には、超音波が届かないため黒色の影(紫色矢印)が引いて見えます。⑧の拡大像でも、大腸癌により層構造が破壊された大腸壁(赤色矢印)が黒色に肥厚し、その内部に狭窄した管腔内の腸管ガス(白色矢印)が偏在して白色に見えています。⑨,⑩は同一症例の内視鏡画像です。内視鏡画像でも大腸内腔の約4分の3周を覆う形の進行大腸癌を認めており、大腸内腔は病変により狭窄しているものの、内視鏡の通過は十分可能でした。
⑪~⑯はS状結腸に認めた進行大腸癌の同一症例画像です。⑪では子宮(黄色矢印)のすぐ横に7㎝大の黒色腫瘤として大腸癌(赤色矢印)がエコーで描出されており、大腸癌内部には狭窄した大腸内腔に貯留した腸管ガス(白色矢印)がエコーで白く見え、シュード・キドニー・サインを示しています。⑫では大腸癌(赤色矢印)により大腸の層構造は破壊され高度に壁肥厚を認めています。その大腸癌(赤色矢印)の口側の大腸(水色矢印)は、大腸癌による狭窄の影響によるものと考えられる浮腫状の壁肥厚を認めますが、便の貯留による拡張像は認めておらず、大腸癌による内腔の狭窄はあるも完全には閉塞していないことがこの画像から推測できます。また大腸癌により狭窄した腸管内腔に腸管ガス(白色矢印)がエコーで白く見え、その背後には一部黒く影(紫色矢印)を引いて見えるところもあります。⑬,⑭の画像でも、大腸癌(赤色矢印)により壁肥厚した大腸が黒色腫瘤として描出され、狭窄した内腔に存在する腸管ガス(白色矢印)が白くシュード・キドニー・サインを示しています。超音波検査により大腸癌が疑われたために、同日施行した内視鏡検査による画像が⑮,⑯です。大腸癌によりほぼ全周性の高度狭窄を示し、進行癌の間に内腔がわずかに見えますが、内視鏡の通過は不可能でした。
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