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超音波検査(小腸①)

超音波検査「小腸①」

エコーで正常の小腸は、①の赤色矢印の様にやや黒色の芋虫状に見え、蠕動運動により時間とともに形を変えて見えますが、腸炎などにより小腸に炎症が生じると小腸壁の肥厚や内腔拡大を認めます。感染性腸炎を起こす病原体には細菌やウイルスがあげられ、典型的には細菌性腸炎では粘膜障害の強い大腸主体の腸炎のことが多く、ウイルス性腸炎では嘔吐や水様性下痢などが主症状の小腸主体の腸炎を発症します。②~④はウイルス性腸炎の同一症例画像です。小腸内部に一部粒状の内容物を含む腸液が充満し、小腸の拡張も見られます。⑤~⑦もウイルス性腸炎の同一症例画像で、腸液を貯留し拡張した小腸(赤色矢印)を認めます。⑤,⑥の小腸の一部では、よく見るとケルクリングと呼ばれる小腸ヒダが縦縞状に薄く確認でき、拡張した小腸内部に黒く見える液状の腸液と粒状の内容物の浮遊像が見えます。また⑥では、拡張した小腸(赤色矢印)の周囲に腫大したリンパ節(黄色矢印)が確認できます。⑦も同一症例の小腸末端部の画像で、壁肥厚を示す小腸(赤色矢印)と腸骨静脈(水色矢印)の間に、10mm大に腫大した楕円形のリンパ節(黄色矢印)を認めます。小腸末端部はリンパ節が比較的多い場所で、ウイルス性腸炎でも炎症の波及により小腸周囲のリンパ節腫脹を認めることがあります。


⑧~⑪は黄色ブドウ球菌による感染性腸炎の同一症例画像です。多くの細菌性腸炎では体内に経口で侵入した菌が腸管内で増殖し大腸粘膜障害を生じて発症するに対し、黄色ブドウ球菌による腸炎では菌が体に入る前に食物中で産生した毒素を経口摂取することにより発症します。すでに産生されている毒素を摂取することで発病する毒素型腸炎では、汚染食物を摂取後に比較的短時間で発症し、嘔吐や水様性下痢などが主症状の小腸型腸炎を認めます。⑧~⑪の黄色ブドウ球菌腸炎の画像でも小腸ヒダ(ケルクリング)が一部で見え、浮腫状に肥厚した小腸(赤色矢印)内部に、腸液の貯留と粒状の内容物が浮遊する像が確認されます。⑫~⑮はキャンピロバクター腸炎の同一症例画像です。キャンピロバクター腸炎は、典型的には盲腸や上行結腸などの深部大腸の粘膜障害を主体とした大腸型の感染性腸炎をきたし、血便や下痢・腹痛を引き起こすものの、小腸粘膜の障害を引き起こすこともあります。⑫,⑬では小腸ヒダ(ケルクリング)が見え肥厚した小腸壁(赤色矢印)が確認でき、⑭では小腸末端部近傍の腸骨動静脈(紫色矢印と水色矢印)の近くに、腫大したリンパ節(赤色矢印)が確認できます。また⑮では、腸炎による炎症のために腸管壁が高度に肥厚した上行結腸(赤色矢印)も確認できます。

 

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