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超音波検査(ヘルニア)

超音波検査「ヘルニア」

ヘルニアとは、臓器が本来あるべき場所から体の結合の弱い組織の隙間などに入り込んで出てくる病態の総称で、腹部のヘルニアの中では鼠径(ソケイ)部のヘルニアが最も多く見られます。鼠径部は股関節前面の足の付け根の所で、ビートたけしのギャグ「コマネチ」で両手がなぞる付近です。鼠径部には腹腔内から下肢に向かう血管や神経などが束になって出てくる所があり、鼠経ヘルニアではその狭い隙間に腸管がはまり込み皮下に出てきます。①~④は鼠経ヘルニアの同一症例画像で皮下に脱出した腸管(赤色矢印)を認めます。脱出した楕円形の腸管(赤色矢印)は内部に灰色に見える腸液を含み、壁は黒・白・黒の層構造を保ちながらも軽度肥厚しています。①~④では水色矢印の所で皮下に腸管が脱出し、その奥のヘルニア門(腹腔内の出入り口)の方に腸管(緑色矢印)は続いています。実際の検査時には脱出した腸管(赤色矢印)内の粒状の内容物が浮遊して奥に続く腸管(緑色矢印)に移動する像や、脱出した腸管(赤色矢印)の形が時間とともに変わる様子が観察できました。この症例では脱出した腸を手で押し込み腹腔内に帰納できたため待機的手術となりましたが、陥頓による虚血で腸管が壊死したり、ヘルニアにより腸閉塞をきたした場合には、緊急手術が必要になることもあります。


腹腔内から腸管などの腹腔内臓器が腹腔外に出てくる外ヘルニアでは、人体の構造的に弱い部分である鼠経部のヘルニアが最も高頻度に起こりますが、稀な外ヘルニアに白線ヘルニアがあります。人間の腹部には腹直筋という筋肉があり、筋肉と筋肉の間は白線という結合織でつながっています。マッチョな人の6パックに割れた腹部を見るとわかりやすく、盛り上がった筋肉と筋肉の間の谷間部分が白線の部分で、この白線に穴が開き腹腔内臓器が皮下に出てくるのが白線ヘルニアです。⑤~⑦は白線ヘルニアの同一症例画像です。⑤では肝臓(紫色矢印)表面の皮下で腹直筋の層(緑色矢印)の中に、黒色の像(赤色矢印)を認めます。腹直筋(緑色矢印)の一部に白線の断裂部(水色矢印)を認め、⑥,⑦の拡大画像では、白線の断裂部から皮下の筋層に突出した黒色部(赤色矢印)が、肝臓表面の腹膜前脂肪織(黄色矢印)と連続しています。これが腹膜前脂肪組織(黄色矢印)が白線断裂部(水色矢印)から皮下まで脱出した白線ヘルニア(赤色矢印)の画像で、実際の検査時にはヘルニア内容物が呼吸変動に伴い断裂部から出入りする像が見えました。⑦ではヘルニア内容物(赤色矢印)と連続する腹膜前脂肪織(黄色矢印)近くには、エコーで白く見える腸管ガス(白色矢印)を含んだ腸管も観察でき、断裂部が大きければ腸管もヘルニア内容物として脱出することがあります。

 

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