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超音波検査(胃③)

超音波検査「胃③」

胃潰瘍は胃内に分泌された胃酸により、胃粘膜の一部が損傷を受けて欠損した状態です。胃の壁肥厚自体はある程度エコーで評価可能ですが、胃潰瘍自体はエコーでは描出できないことも多く胃潰瘍の診断は基本的には内視鏡検査で行います。しかし深掘れ潰瘍では、潰瘍底に溜まった潰瘍内ガスが厚く肥厚した胃壁の層内に白く見えることで、エコーでも胃潰瘍の存在が予想できることもあります。①~⑤は胃角小弯に認めた胃潰瘍の同一症例画像です。①のエコー像では黒く見える胃液(灰色矢印)を内部に含み、胃壁は全周性に高度の炎症性肥厚を示しています。②では、エコーで白く見える胃内ガス(白色矢印)表面の胃壁は、粘膜層(水色矢印)、粘膜下層(緑色矢印)、筋層(赤色矢印)、漿膜(黄色矢印)が黒・白・黒・白と層構造を比較的保ち肥厚していますが、桃色矢印の場所では壁肥厚がさらに高度になり壁の層構造の判別が難しくなり黒色に肥厚しています。その部分を拡大した③,④では、胃内ガス層(白色矢印)表面で肥厚し黒く見える胃壁内に、潰瘍底に貯留したガス(紫色矢印)が白く見えています。このように肥厚した胃壁内に胃内ガス層と段差のある潰瘍底ガスが白く見える像として、胃潰瘍はエコーで描出されます。⑤は同症例の内視鏡像で、胃角部に深掘れ潰瘍が確認できます。


⑥~⑨も胃潰瘍の同一症例画像です。⑥では、内部にエコーで黒色に見える胃液(灰色矢印)と、白く見える胃内ガス(白色矢印)を含んだ胃は、胃壁の肥厚を全周性に認めています。⑥の画像では胃壁の層構造は、黒色の粘膜層(水色矢印)、白色の粘膜下層(緑色矢印)、黒色の筋層(赤色矢印)、白色の漿膜(黄色矢印)と比較的判別することができ、層構造が保たれた壁肥厚を胃全体で示しています。胃壁の肥厚は高度で、特に粘膜下層(緑色矢印)を中心とした壁肥厚を全周性に認めています。⑦,⑧の画像では、内部に胃液(灰色矢印)と胃内ガス(白色矢印)を含んだ胃は壁肥厚を示し、肥厚した胃壁内に、胃内ガス(白色矢印)とは段差のあるガス像(紫色矢印)がエコーで白色に見えています。この症例でも、肥厚した胃壁内の潰瘍底に潰瘍内ガス(紫色矢印)が貯留した像として胃潰瘍が描出され、胃潰瘍の可能性が疑われました。⑨は同症例の内視鏡画像です。胃体下部に胃潰瘍の炎症波及により周囲がなだらかな丘の様に盛り上がった胃壁が肥厚した部分に、深掘れの潰瘍面を内視鏡像で認めています。


⑩~⑬は穿孔性胃潰瘍の同症例画像です。⑩では胃(赤色矢印)は、胃内ガス(白色矢印)や、胃液(灰色矢印)、粒状にみえる食物残渣(橙色矢印)を内部に含み、壁は肥厚しています。⑪では、胃角部付近の胃壁(桃色矢印)は炎症のためエコーで黒く肥厚して見え、壁の層構造の判別は困難です。拡大像では胃内ガス層(白色矢印)と段差のあるガス像(紫色矢印)が、肥厚した胃壁(桃色矢印)の中に白く見えます。⑫の拡大像でも肥厚した胃壁(桃色矢印)の中に白色領域(紫色矢印)を伴い、深く広い潰瘍底内のガスが疑われるエコー像を示しています。胃潰瘍で胃壁に穴が開き穿孔すると、胃液や胃内ガスが胃から腹腔内に漏れ出して腹膜炎をおこし、腹腔内ガスや腹水貯留を認めることがあります。この症例では強い腹痛と腹膜炎を疑わせる腹壁の固さを認めたため、専門病院で緊急手術となりました。胃穿孔時の腹腔内ガスはエコーでも時に描出できることがありますが、腹腔内ガスの検出能はCT検査が最も優れています。本症例ではエコーでも専門病院で行ったCTでも腹腔内ガスは描出できませんでした。開腹手術では胃角小弯に4cm大の穿孔部を伴う胃潰瘍を認めましたが、腸間膜が穿孔部を覆い腹腔内への胃内容物の流出は軽度でした。この症例では、穿孔部を大網(胃の下部にある腸間膜)で充填する術式の手術で完治しています。⑬は緊急手術半年後の内視鏡画像で、胃角部に潰瘍穿孔後の潰瘍瘢痕を認めています。

 

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