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黒色便(便が黒い)

黒色便(便が黒い)

黒色便(便が黒い)とは

黒色便とは真っ黒の色の便です。通常の便は黄土色から褐色の色をしていますが、肉類やチョコレートなどの摂取量が多いと暗褐色の色が濃い便が出ることもあります。しかし黒色便とは濃い褐色というような濃い色の便というよりアスファルトの様に真っ黒な便で、海苔の佃煮や墨の様に真っ黒な便を指します。このような便が出た時には消化管出血の可能性があり注意が必要です。血液には鉄分が多く含まれており、胃や十二指腸などの上部消化管から出血すると、出血した血液の鉄成分が胃酸により酸化され黒色になります。一方で、肛門に近い大腸からの出血では赤~暗赤色の便が出ます。胃や十二指腸は血流が豊富な臓器で、胃潰瘍や十二指腸潰瘍からの出血では大量出血となることもあります。吐血として血を吐く症状になれば緊急事態であることは誰でも気づくものの、血液が小腸側に流れ黒色便になると大量出血をしていても気がつかずに、知らぬ間に貧血が進行しショック状態になることも時にあります。一般的に大腸からの出血に比べて胃や十二指腸からの出血は重篤なことが多く、黒色便が出た時は医療機関への早急な受診が必要です。ただし、イカ墨や多量の海苔の摂取、鉄剤の薬の内服などでも便が黒くなりますが、これらの摂取後に便が黒くなるのは問題ありません。


黒色便の症状と原因

海苔の佃煮や墨の様に真っ黒な黒色便が出た時には、胃や十二指腸などの上部消化管からの出血が胃酸にさらされて真っ黒な便になっている可能性があり、上部消化管出血の可能性があるため医療機関へ早急に受診し胃カメラによる原因精査が必要になります。

●胃潰瘍

胃は比較的血流の多い臓器で、胃潰瘍からの出血で黒色便を認めることがあります。胃潰瘍では、黒色便以外ににみぞおち付近の痛みやむかつき、食欲不振、吐き気などの症状を伴うことも多く、ピロリ菌やストレスが胃潰瘍の発生に関与していることも多いです。

●十二指腸潰瘍

十二指腸球部には潰瘍ができやすく、十二指腸潰瘍からの出血により黒色便を認めることがあります。十二指腸潰瘍は胃潰瘍よりも胃酸分泌の活発な若い人に発症しやすく、その発生にピロリ菌感染が関与していることも多いです。空腹時の腹痛をしばしば伴います。

●胃癌や食道癌などの消化管悪性腫瘍

胃癌や食道癌などの悪性腫瘍も上部消化管出血の原因となり、癌からの出血が小腸や大腸に流れていくと黒色便となって排出されます。黒色便の症状を認めるような胃癌や食道癌では、病状がある程度進んだ進行癌であることが多いです。

●胃・食道静脈瘤の破裂

肝硬変の患者さんでは、しばしば胃や食道に静脈瘤ができます。静脈瘤はあるだけでは問題にはなりませんが、時に破裂することがあり上部消化管出血の原因となります。静脈瘤は破裂すると大量出血となることも多く、新鮮血を多量に吐血することが多いものの、小腸側に流れた血液は黒色便として排出されます。肝硬変の基礎疾患がある方に黒色便を認めた場合は、静脈瘤の破裂にも注意が必要です。

●食事や内服薬の影響

イカ墨のパスタやパエリアなどを食べた後や、海苔やひじきを多量に食べた後には、黒色の便が出ることがあります。また貧血の治療のために内服する鉄剤や鉄分を含んだサプリを服用すると、黒色の便が出ることもあります。これらの食品や薬の経口摂取による黒色の便は消化管出血ではないので、病気ではなく問題ありません。

黒色便の原因となる病気に対する検査と治療

黒色便を認めた場合には消化管出血の可能性があり、血液検査により貧血の程度を見ることでその重症度を推定することができます。また黒色便を認め上部消化管出血の可能性がある場合には、胃カメラによる原因検索が必要になります。内視鏡検査では、胃、食道、十二指腸を実際に内視鏡で観察することで、消化管出血の原因となる病変の有無を調べることができます。胃潰瘍や十二指腸潰瘍による出血では、出血から黒色便がでるまでに時間がある程度経過していることも多く、内視鏡検査時には胃潰瘍や十二指腸潰瘍からの出血は自然止血していることもしばしばあります。ただし、自然止血していても潰瘍内に露出血管を認める場合には再出血をきたすことも多く、露出血管や活動性の出血を認めた場合には内視鏡的な止血処置が行われることもあります。潰瘍からの出血が多量の時や、胃や食道の静脈瘤破裂では、病状により輸血による治療や入院治療が必要になります。潰瘍があっても露出血管や活動性の出血がない場合は、一時的な絶食と制酸剤内服による保存的治療により潰瘍は多くの場合は治癒します。胃癌や食道癌などの悪性腫瘍が黒色便の原因である場合には、病巣の広がりを各種検査で評価し、患者さんの全身状態なども考慮して最善の治療法を選択することになります。