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超音波検査(食道)

超音波検査「食道」

食道はのど(喉頭)と胃を繋いでいる管状臓器で、胸部では左右の肋骨が結合する胸骨の背後に食道は位置するため、基本的にエコーで胸部食道の描出は困難ですが、頸部や腹部食道の一部は観察可能です。①は正常頸部食道の短軸画像で、食道は甲状腺の左葉(紫色矢印)背後に層構造を認める楕円形(橙色矢印)に見えています。①の拡大像では食道内ガス(白色矢印)が中心に白く見え、頸部食道の粘膜層(水色矢印)、粘膜下層(緑色矢印)、筋層(赤色矢印)、漿膜(黄色矢印)が順番に、黒・白・黒・白と層状に見えています。②~⑨は食道入口部の食道憩室の同一画像です。②では内腔にガス(白色矢印)を含んだ食道(橙色矢印)の横に、内部にガスや食物残渣を含んだ楕円形の食道憩室(赤色矢印)が見え、食道と桃色矢印の部分で連続しています。③,④は短軸像、⑤は長軸像の食道憩室のエコー像で、内部にガス(青色矢印)を含む食道憩室(赤色矢印)が楕円形に見え、背後に白や黒の影(灰色矢印)を認めています。憩室内にはガスとともに食物残渣も貯留し、憩室内のガスや残渣のために、エコーでは黒色や白色の影を背後に引いて見えています。⑥~⑨は同症例の内視鏡像で、食道内腔(橙色矢印)から側方に食道憩室(赤色矢印)を認め、憩室内部に食物残渣の貯留(水色矢印)が確認できます。


頸部食道以外に胃接合部付近の腹部食道もエコーで一部観察できます。⑩は肝臓(紫色矢印)の背側の正常腹部食道画像で、食道胃接合部付近の腹部食道(黄色矢印)が層構造を保った管腔臓器として描出されています。また高度な食道裂孔ヘルニアでは、心エコーにて心臓越しに病変が描出できることがあります。⑪~⑰は食道裂孔ヘルニアの同一症例画像です。内視鏡画像⑪,⑫では、胃の一部が胸腔内に突出するヘルニア像(緑色矢印)が確認できます。⑬は同症例のCT画像で横隔膜(緑色矢印)を超えて胸腔内に入り込んだ胃(赤色矢印)や、腸管(水色矢印)が確認できます。⑭,⑮は同症例の心エコー像ですが、食道裂孔ヘルニアとして胸腔内に突出するヘルニア内容(赤色矢印)が、心臓の左心房(水色矢印)を圧迫し左心房内にあるように見えます。以前に私が経験した別の高度食道裂孔ヘルニアの症例では、患者さんを私が心エコーで観察をしながら同時に別の医師が胃内視鏡検査を行い、食道から胃に内視鏡が通過すると共に心エコーで左心房付近に見える部分の見え方がリアルタイムに変化するのを確認する事で、エコーで見える所が間違いなく食道裂孔ヘルニアにより突出した胃の一部であると診断したことがありました。本症例では高度食道裂孔ヘルニアのため、専門病院で外科的手術が行われました。⑯, ⑰の手術後の心エコーの画像では、術前に見られたヘルニア内容の突出が左心房付近に見られず改善しています。

 

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