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超音波検査(腹水②)

超音波検査「腹水②」

正常でも腹腔内に少量の腹水は存在するものの、エコーで腹水が確認できる時には腹腔内の臓器に炎症が起きることで腹水が増加していることがしばしばあり、エコーで腹水の存在が確認できることが病気の発見の手掛かりになることもあります。①~⑥は急性肝炎の同一症例画像です。急性肝炎は、肝炎ウイルスや自己免疫、薬剤などにより急激に高度な炎症が肝臓に起こることで発症し、炎症により肝臓の腫大を認めたり、炎症が周囲に波及すると胆嚢壁の肥厚や腹水貯留を認めることがあります。①,②では肝臓(白色矢印)と腎臓(青色矢印)の間のモリソン窩に、少量ですが腹水(赤色矢印)が確認できます。③では骨盤内の膀胱(水色矢印)周囲で、腸管近傍に貯留した腹水(赤色矢印)がエコーで黒く描出されています。④では右の腸腰筋(橙色矢印)表面に、腹水(赤色矢印)が確認できます。また、⑤,⑥では肝臓(白色矢印)の炎症が波及し胆嚢(緑色矢印)は全周性に高度壁肥厚を認め、肥厚した胆嚢周囲にも少量腹水(赤色矢印)が黒色線状に確認できます。この症例は10代男性に発症した発熱と右下腹部痛、腸腰筋前面から骨盤内の腹水という病態から、当初は虫垂炎の穿孔などの可能性も疑われましたが、専門病院での精密検査の結果、急性肝炎と診断されました。


⑦~⑫は急性膵炎の同一症例画像です。膵臓は食べ物の中の蛋白質を消化するための消化酵素である膵液を生成しています。何らかの原因で膵液が活性化されることで、膵臓自身や内臓が膵液によって消化されてしまう病気が膵炎で、発症すると強い上腹部痛や背部痛を認めます。⑦~⑪では門脈(水色矢印)や脾静脈(紫色矢印)の腹側の膵臓(橙色矢印)は、膵炎のために腫大し内部の濃さにはムラを認めます。また炎症の波及により、周囲の脂肪組織(桃色矢印)は白く輝度が上昇しています。さらに、⑦~⑨では膵臓(橙色矢印)と門脈(水色矢印)の間に膵炎による少量腹水(赤色矢印)を認め、⑦,⑩,⑪では膵臓腹側や周囲にごく少量の腹水(赤色矢印)が黒色線状に見えています。⑩では胆嚢(青色矢印)内に砂状の胆石(灰色矢印)を認め、また患者さんは大酒家でもあり、アルコールや胆石が原因の膵炎が疑われました。⑪,⑫では膵臓(橙色矢印)や肝臓(白色矢印)に接する胃(緑色矢印)は高度に拡張し、内部に貯留した胃液(黄色矢印)が真っ黒に見えています。急性膵炎からの炎症が周囲に波及すると、胃腸の蠕動運動が低下し、膵炎ではこのような胃の拡張像(緑色矢印)や腸閉塞像を時に示します。また重症の急性膵炎では、炎症波及により腹腔内に高度の腹水貯留をきたすこともしばしばあります。

 

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